【出逢い編16】とりあえず歌いますか?
先日の初食事は、見事なまでに手応えもなく、唯一分かった事は、『極度の遠慮しい』という事だけであった。
ごはんを一緒に食べに行ったのであれば、次は当然カラオケである。
当時は今よりもかなりのカラオケブームであり、とりあえずカラオケ行っとく?みたいなノリが主流だったのだ。
ただ、ここで気を付けなければならない事は、初めて男女が2人でカラオケに行く場合、ある程度お互いの音楽の趣味を分かっておいた方がいい、という事である。
普段はおとなしく、おっとりとした女の子がカラオケでは、ゴリゴリのヘビーメタルを完璧に歌い上げる事もあるからだ。
男の子の方もヘビーメタルが好きなら問題ないが、そうでないと少し引いてしまうかもしれない。
しかも、あらかじめ分かっているのならいいのだが、カラオケに来ていきなりの彼女のキャラ変である。
まあ、それで引いてしまう男はその程度の気持ちなのだが。
むしろ、彼女の新しい一面を見れて喜ぶべき所である。
自分に話を戻すと、これまでの彼女との会話で、彼女はかなり音楽が好き、そして邦楽、そしてポップスが好き、といたってオーソドックスな感じだ。
僕の方はというと、自分自身がバンドをしていたというのもあり、バンドで活動している邦楽アーティストが好きだった。
その時でいえば、GLAYやMr.Childrenなど。
音楽の趣味も似たような感じの2人が、初めて一緒にカラオケに行った。
部屋に入り、曲の本をパラパラとめくる。(当時はまだ本で曲を探す時代)
こんな時はやっぱり男の僕から先に歌うべきである。
「とりあえず歌いますか?ほんじゃ俺、これ歌うわ。」
今思っても、これ以上ないほど、無難な選曲だ。
暗い曲でもなく、いきなりそんなノリノリでもなく、ラブソングでもない。
初めての一曲にオススメである。
無難な曲を無難に歌い終わると、彼女はまだ曲を選んでいた。
僕は何気なく聞いてみた。
「普段、どんなん歌うん?」
「ん~、大体なんでも歌うんやけど...」
彼女はそう言いながら、リモコンに番号を打ち込んでいく。
そして流れてきた曲は、the brilliant greenの『There will be love there 』だった。
なるほどなるほど。
お互い無難な選曲ですな~。
そんな事を思いながら、ジュースを飲んでいたら、イントロが終わり、彼女が歌い出す。
そして僕は衝撃を受けた。