【出逢い編18】キュンな関係
僕が有美に電話番号を渡した日からもう1ヶ月が経とうとしていた。
食事も一緒に行き、カラオケも行って、何よりも会話の量が半端ではなかった。
僕はあまり喋るほうでは無いのだが、頑張っていたんだと思う。今思えば。
この日は、夕方からちょっと遠くまでドライブに出掛ける事に。
車内では、いつも通り他愛もない会話が繰り広げられている。
付き合っている訳ではないので、家の場所を教えてくれなくても不思議ではない。
不思議ではないけれど、なんとなくモヤモヤした気持ちに耐えられず、勇気を出して聞いてみた。
「なあ、俺らって今、どういう関係なんかな?」
ストレートどまんなか直球勝負である。
「ん~、友達って感じでもないしな~。」
有美はそう言うと、しばらく考えて更に答えた。
「キュンな関係やな!」
「えっ?ひょっとしてこのキュン?」
そう言って僕は車のドリンクホルダーに置いてあるペットボトルを指差した。
当時、『キュン』という名前の飲み物があり、ちょっと甘酸っぱい味で、僕はそれにハマり、『キュン』ばっかり飲んでいた。
「そう、そのキュン。」
なるほど、甘酸っぱい関係か...
と僕は勝手なポジティブ解釈をしていた。
「だって、2人ともキュンばっか飲んでるやん。」
僕のポジティブ解釈は3秒で終わりを告げたのであった。
しかし、『キュンな関係』という響きは悪くない。青春ドラマに出てきそうだ。
まんざらでもない答えに、ちょっと満足しながら車は隣の県に入った。