どうしようもないクズ男の半生記

今年で40歳になり、人生を折り返そうとしているクズ男の半生記です。

【出逢い編19】波止場にて

隣の県まで車を走らせて、更に海に向かって走る。

家を出た時はまだ夕方だったが、もうすっかり真っ暗になっていた。

 

そして車は海に着いた。

海といっても浜辺ではなく、波止場だ。

船着き場があり、背面には倉庫が建ち並び、マフィアが秘密の取引をしていそうな、あの波止場である。

 

車を止めて、海を見ながら、相変わらずくだらない話をずっとしていた。

 

1時間くらい話していたその時、僕の視界に何かが、ふと入ってきた。

 

「ちょっと待って。あれ何?」

 

「え?どこ?」

 

「あそこ、あそこ。」

 

そう言って僕は、50メートル程前方の海面を指差した。

 

目を凝らしてよく見ると、ちょっとアヒルっぽい、白い何かが海面をプカプカと浮いていた。

 

「えっ?おまる?」

 

どう見ても僕にはアヒルのおまるにしか見えなかった。

 

「なんでおまるよ?」

 

「いやいや、あれ絶対おまるやって。」

 

「海におまるとかありえへんやろ。」

 

そんなやり取りをしながら2人で爆笑していた。

 

そして、そのおまるらしき物体は波に揺られて僕らの視界から消えていった。