【青春爆走編15】まだクール気取ってんの?
僕らの住んでいる近くには、アイススケート場はなく、電車に乗ってちょっと都会まで出なければならない。
なので、駅で待ち合わせをする。
僕とタツヤはちょっと早めに駅に着いた。
「Kちゃんは、タツヤに気あるん?」
「さあ~?わからん。」
「そんなん好きじゃなかったら誘ってけえへんやろ。こんな寒いときに寒いとこへ。」
「さあ~?わからん。」
「連れてくる友達、どんな子かな?かわいいかな?」
「さあ~?わからん。」
お前は、『さあ、わからん人形』か!
と突っ込みたくなる気持ちを我慢して、タツヤに念を押しておく。
「かわいくなくても全然いいけど、さぶい子やったら俺帰るからな。スベるのはスケートだけでええねん。」
「おっ?タク、うまい事言うなあ。まあ、タクやったらいけるよ。」
なぜ、俺やったらいけるのか、意味がわからないが、なんとなく納得した。
そんな話をしていると、Kちゃんとその友達がやって来た。
Kちゃんは、同じ学校だが、喋ったことはない。基本、僕は学校でタツヤが仲のいい女子とは喋らない。
タツヤも自分の仲のいい女子と俺が喋るのは気が気でないと思う。
学校での自分のキャラをそんなに守りたいのか?俺が女子にタツヤの恥ずかしい秘密をばらすとでも?
Kちゃんの連れて来た友達に目をやる。
第一印象は良くも悪くも普通、である。
電車がすぐに来たので、とりあえず乗り込むと、電車はすいていたので、4人並んで座ることに。
この絵面だけでも、僕にとってはサブさ全開だ。
カップルが横に並んで座るのは普通。
4人だとどうなる?
オーソドックスに端から、男、男、女、女?
それともシャッフルで、男、女、男、女?
いやいや、まさかの、男、女、女、男?
まあ僕らはオーソドックス型に座った訳だが、そこがサブいポイントではない。
誰も率先して喋らないので、4人とも視線は真っ直ぐ前を見ている。
前の座席で口を半開きでウトウトしているおじいさんを4人で見ているのだ。
この時点で、すでに僕は帰りたかったが、多分、Kちゃんはタツヤの事が好きなので、そこは気を使って、今日は黒子に徹する覚悟をした。
にしても、タツヤは喋らない。Kちゃんはタツヤの性格をわかってないのか?
学校ではクール気取ってるだけだぞ?この男は。
女子の方からガンガン喋らないと、この男は喋らないぞ?
タツヤもなんか喋れや!気まず過ぎるやろ、この空気!
そんな事を考えていたら、1人で勝手に気まずくなり、打開策をずっと探していた。