どうしようもないクズ男の半生記

今年で40歳になり、人生を折り返そうとしているクズ男の半生記です。

【青春爆走編19】僕らのバイブル

1993年が終わり、1994年が始まって、短かった冬休みも終わり、3学期が始まる。

 

始業式の日は学校は午前中に終わるので、家で昼ごはんを食べた後は、いつものように、ヒロシの家に向かう。

 

5人とも家は近いので、歩きでもすぐに行ける距離だ。

 

ヒロシの家に着き、2階の窓に向かって、舌打ちを鳴らそうと、窓の方を見ると、ヒロシが窓の外にむけてタバコをふかしていた。

 

「おう!早いな。来んの。」

 

ヒロシがそう言い終わる前に、すでに僕は家に上がり込んでいた。

 

部屋に入り、とりあえずマンガを読む。

その頃、僕らがハマっていたのは、週刊少年マガジンで連載していた『特攻の拓』と、同じくマガジンで連載していた『湘南純愛組』だった。

 

ヒロシの部屋には、この2つの単行本があり、何回も何回も読みふけっていた。

 

「タク~、なんかおもろい事ないんかよ?」

 

「こないだ、タツヤとアイススケート行ったで。」

 

「もうそれ、何回も聞いたって。サブいし、サブかったんやろ?」

 

「なんか熱い事ないかなあ。」

 

そう言ってタメ息をしながら、またマンガを読んでいると、ヒロシが

「タク、熱い事、あるぞ。」

と言いながらニヤリとしていた。

【青春爆走編18】本編始まる

こうして僕らが高校生になった1993年が終わって、1994年が始まるわけですが、ここまでの話は、ほんの序章です。(笑)

 

5人のエピソードを少しだけ書かせてもらいました。ほんとはもっと色々あるんですが。ブログには到底書けないような事とか(笑)

 

でも、ここまでの話でだいたい5人の性格的なものや、キャラみたいなものはわかってもらえたと思います。

 

で、ここからが【青春爆走編】の本編です。

文字どおり青春を爆走していく感じですね。

 

登場人物は基本的に5人だけです。

話は、年が明けて冬休みも終わり、3学期の始業式から始まります。

【青春爆走編17】ただ、滑りにいきます。

最後にアイススケートに行ったのは小学校5年の時くらいなので、5年ぶりくらいだ。

 

あの頃は、アイススケートが珍しく、近くにたまたまあったので、友達とよく行っていた。

 

受付でスケート靴を借りて、履き替える。

そしてリンクに入る。

ここで、恋人同志ならキャッキャッ言いながら滑り始めるのだろうが、4人とも黙々とスケート靴を履き、静かにそれぞれリンクにはいる。

実におごそかである。

まるでなにかの儀式のようだ。

 

Kちゃんも友達もアイススケートは初めて、という事で、立つだけで産まれたての子鹿のようにプルプルしていた。

 

ここでも、恋人同志なら、手でも繋いで一緒に滑るのだろうが、あいにく今日はその日ではない。

 

タツヤよ、お前の人選ミスだ。ヒロシかショウジを連れて来た方が、まだちゃんと女の子の相手をしてあげれてたと思うぞ。

 

そんな事を考えながら、ぐるっと一周していると、まだ2人はプルプルしていた。

 

タツヤはKちゃんになにかアドバイスみたいな事を言っていたので、僕も友達の方にとりあえずアドバイスをしてみた。

 

「えーと、怖がって腰が引けたら余計にバランス悪くなるから。で、とりあえず足を出す。」

 

「そんなん無理ー」

 

アイススケートを完全に甘く考えて来たな。この子らは。

と思いながらも、ちょっと和まそうとしてみる。

 

「こけるとき、気つけて。氷ってめっちゃ硬いから、お尻からこけたらお尻2つに割れるで。」

 

今じゃ、完全にセクハラなオヤジギャグを繰り出すが見事にスルーされる。

 

こうなると、小学生のグループ交際のように、男と女と完全に分かれる。

 

タツヤよ、外の気温以上にサブいんやけど。渾身のギャグもスケート以上に滑ったんやけど。」

 

「ああ、タクもう適当に滑っといていいで。あの子らも、もうすぐ帰るってゆうんちゃうかな。」

 

「ほんじゃ、一生分滑っとくわ。帰る時ゆうて。」

 

そう言って僕は1人で延々と滑っていた。

この時の宣言どおり、この時から25年間、1度もアイススケートに行っていない。

 

それからちょっとして、タツヤが呼びにきて帰ることに。

 

帰る頃になると、タツヤもだいぶ女の子らと打ち解けていて、僕を除く3人で話が盛り上がったりしていた。

 

待ち合わせをしていた駅に着き、そこで2人と別れる。

アイススケートで、というよりも気を遣いすぎて疲れた。という感じだ。

 

「今年最後にめっちゃ疲れたわ。」

 

「俺も。」

 

嘘をつけ、お前は何も考えてなかったやろ。

と、心の中でツッコミながら2人で真冬の道を家へと帰った。

 

こうして1993年は終わり、年が明け、1994年が始まる。

 

 

【青春爆走編16】フォーメーションチェンジ!

要は、Kちゃんとタツヤが仲良くなれればいいわけだ。

2人で喋る状況を作り出せばいいのだ。

そして僕は行動に出た。

端っこに座っていた僕は、席を立ち、反対側の端っこに座っていたKちゃんの友達の隣に座った。

 

オーソドックス型から一瞬で、まさかのサンドイッチ型へフォーメーションチェンジである。

 

僕がこっちで友達と喋っておけば、Kちゃんもタツヤと喋りやすい。

Kちゃんもこの状況を望んでいたに違いない。

 

とりあえず僕は、出身中学校の話や、部活してたか、とか話をいろいろと振ってみたりしていた。

まあ、それなりに話もしてくれて、良くも悪くも普通だった。やっぱり。

 

ここまで頑張ってんやから、ちゃんと喋れよ、タツヤ!

と思いながらタツヤの方を見ると、まだ2人とも無言で、口半開きのおじいさんを見ている。

 

おもわずタメ息がでそうになったが、だいたい想像の範囲内だ。

 

そうこうしている内に、電車は目的地の駅に着いた。

そのアイススケート場は駅のすぐ裏手にあるので、駅を出たらすぐに入口が見えてくる。

 

相変わらず、タツヤとKちゃんはあまり会話がない。

タツヤは僕にばかり話し掛けてくる。

いっつも嫌っていう程話してるやないか!

ひょっとして俺に気がある?

とホモ疑惑まで頭に浮かんでくる。

 

ちょっと古いスケート場だったが、お客さんもそこそこいそうな感じで、程よく賑わっていた。

 

僕の分のスケート代はタツヤが支払ってくれて、4人はスケート場の中に入った。

 

 

【青春爆走編15】まだクール気取ってんの?

僕らの住んでいる近くには、アイススケート場はなく、電車に乗ってちょっと都会まで出なければならない。

 

なので、駅で待ち合わせをする。

 

僕とタツヤはちょっと早めに駅に着いた。

 

「Kちゃんは、タツヤに気あるん?」

 

「さあ~?わからん。」

 

「そんなん好きじゃなかったら誘ってけえへんやろ。こんな寒いときに寒いとこへ。」

 

「さあ~?わからん。」

 

「連れてくる友達、どんな子かな?かわいいかな?」

 

「さあ~?わからん。」

 

お前は、『さあ、わからん人形』か!

と突っ込みたくなる気持ちを我慢して、タツヤに念を押しておく。

 

「かわいくなくても全然いいけど、さぶい子やったら俺帰るからな。スベるのはスケートだけでええねん。」

 

「おっ?タク、うまい事言うなあ。まあ、タクやったらいけるよ。」

 

なぜ、俺やったらいけるのか、意味がわからないが、なんとなく納得した。

 

そんな話をしていると、Kちゃんとその友達がやって来た。

Kちゃんは、同じ学校だが、喋ったことはない。基本、僕は学校でタツヤが仲のいい女子とは喋らない。

タツヤも自分の仲のいい女子と俺が喋るのは気が気でないと思う。

 

学校での自分のキャラをそんなに守りたいのか?俺が女子にタツヤの恥ずかしい秘密をばらすとでも?

 

Kちゃんの連れて来た友達に目をやる。

第一印象は良くも悪くも普通、である。

 

電車がすぐに来たので、とりあえず乗り込むと、電車はすいていたので、4人並んで座ることに。

この絵面だけでも、僕にとってはサブさ全開だ。

カップルが横に並んで座るのは普通。

4人だとどうなる?

オーソドックスに端から、男、男、女、女?

それともシャッフルで、男、女、男、女?

いやいや、まさかの、男、女、女、男?

 

まあ僕らはオーソドックス型に座った訳だが、そこがサブいポイントではない。

 

誰も率先して喋らないので、4人とも視線は真っ直ぐ前を見ている。

前の座席で口を半開きでウトウトしているおじいさんを4人で見ているのだ。

 

この時点で、すでに僕は帰りたかったが、多分、Kちゃんはタツヤの事が好きなので、そこは気を使って、今日は黒子に徹する覚悟をした。

 

にしても、タツヤは喋らない。Kちゃんはタツヤの性格をわかってないのか?

学校ではクール気取ってるだけだぞ?この男は。

女子の方からガンガン喋らないと、この男は喋らないぞ?

 

タツヤもなんか喋れや!気まず過ぎるやろ、この空気! 

 

そんな事を考えていたら、1人で勝手に気まずくなり、打開策をずっと探していた。

 

 

 

【青春爆走編14】スベるのはスケートだけでいい!

いよいよ1993年も残り3日となった日の事。

 

この日はタツヤと出掛ける事になっていた。

 

なんとタツヤが高校の友達とアイススケートに行く、そしてその子が友達を連れてくるからこっちも2人で行く、という訳だ。

もちろん、相手は女の子である。

 

僕とタツヤは同じ高校で、男子の数が圧倒的に少ない。女子は男子の4倍くらいいる。という学校だ。

 

周りにそれを言うと、女の子多いからええなぁ、とかよく言われるが、決してそんな事はない。

女の子の数と楽しい学園生活は必ずしも比例しないのである。

 

そして、これは僕らの中での7不思議の1つなのだが、なぜ、タツヤが学校の女子から人気があるのか?という事。

背が高いからか?無口であまり喋らないからクールにみえているのか?

普段のタツヤを知っている僕らからしたら不思議でしょうがない。

 

で、おそらくだが、その女の子はタツヤと2人でスケートに行きたかったんだと思われる。

で、タツヤは誰か友達連れておいでよ、こっちも連れていくから、みたいなやり取りをしたに違いない。

 

そうでもないと、タツヤから女の子がらみの誘いなんか、まずありえない。

2人で行ったらいいのに。と思いながらもスケート代をおごってくれるというのにつられて僕も行く事に。

 

しかも、この寒いのにアイススケートって!

タツヤを誘った女の子は同じ高校なので話した事はないが知っている。

問題はその子がどんな友達を連れてくるのか?

 

ノリの悪い子だったら、かなりさむい事になりそうだ。

タツヤは無口なんかじゃなく、口下手なのだ。ほとんど喋らない。

 

そうなると、空気を読む僕としては何とか喋ろうとする。

そこでノリの悪い子だったら、僕が1人でスベっている状態になること間違いなし!

 

スベるのはスケートだけであってほしい、と願いながら、タツヤと待ち合わせの駅へ向かった。

 

 

【青春爆走編13】あの自転車は今

なんとか、バイト先までたどり着いた僕は、ひと仕事終えたような感覚だった。

 

厨房に入り、その時たまっている食器や、調理器具があれば、とりあえず洗う。

そして、床の排水口のグリストラップの掃除。そしてゴミを集めてゴミ置き場へ持っていく。

 

着いたら、まずはここまでノンストップでこなす。

 

それが終わると、次の日の朝食の食器の準備。人数を確認して、トレイの上に人数分の小皿を並べる。

 

並べたら、山菜のおひたしみたいなやつを小皿に盛り付けていく。

盛り付けが終わったら、トレイごと冷蔵庫へ。

次は、人数分の茶碗とお椀を出しておく。

 

これで、次の日の準備は終わり。

 

ここまで終わったら、まかないタイムである。厨房の料理人さんが作って置いてくれているのでそれを食べる。

なかでも、だし巻きは最強クラスに美味かった。

 

まかないタイムになると、その日の夕食の食器が下げられてくるまで待機という名の自由時間である。当然、時給は発生する。

 

ここでバイトしているのは僕ら5人だけではなく、年上の人が3人いた。

 

1番最年長、4つ上のH君、社会人で3つ上のT君、専門学生で3つ上のM君、の3人と僕ら5人の計8人がここでバイトをしていた。

 

 

この日はH君とM君と僕の3人がシフトに入っていた。

 

いつもの様に、作業をこなし、賄いを食べているとき、M君が聞いてきた。

 

「そういえば、タクちゃん、今日どうやって来たん?」

 

「自転車で来た。」

 

「まじで?こんな山の上まで?」

 

「マジしんどかったっす。」

 

「帰り、乗っけて帰ったろか?どうせ通り道やし。」

 

「まじっすか?お願いします。」

 

「でも、自転車どうする?」

 

「いいです、いいです。とりあえず置いときます。」

 

この日はM君のおかげで帰りは快適に帰る事が出来た。

 

あれから25年経った今も、まだ自転車は停めたままだ。