【青春爆走編13】あの自転車は今
なんとか、バイト先までたどり着いた僕は、ひと仕事終えたような感覚だった。
厨房に入り、その時たまっている食器や、調理器具があれば、とりあえず洗う。
そして、床の排水口のグリストラップの掃除。そしてゴミを集めてゴミ置き場へ持っていく。
着いたら、まずはここまでノンストップでこなす。
それが終わると、次の日の朝食の食器の準備。人数を確認して、トレイの上に人数分の小皿を並べる。
並べたら、山菜のおひたしみたいなやつを小皿に盛り付けていく。
盛り付けが終わったら、トレイごと冷蔵庫へ。
次は、人数分の茶碗とお椀を出しておく。
これで、次の日の準備は終わり。
ここまで終わったら、まかないタイムである。厨房の料理人さんが作って置いてくれているのでそれを食べる。
なかでも、だし巻きは最強クラスに美味かった。
まかないタイムになると、その日の夕食の食器が下げられてくるまで待機という名の自由時間である。当然、時給は発生する。
ここでバイトしているのは僕ら5人だけではなく、年上の人が3人いた。
1番最年長、4つ上のH君、社会人で3つ上のT君、専門学生で3つ上のM君、の3人と僕ら5人の計8人がここでバイトをしていた。
この日はH君とM君と僕の3人がシフトに入っていた。
いつもの様に、作業をこなし、賄いを食べているとき、M君が聞いてきた。
「そういえば、タクちゃん、今日どうやって来たん?」
「自転車で来た。」
「まじで?こんな山の上まで?」
「マジしんどかったっす。」
「帰り、乗っけて帰ったろか?どうせ通り道やし。」
「まじっすか?お願いします。」
「でも、自転車どうする?」
「いいです、いいです。とりあえず置いときます。」
この日はM君のおかげで帰りは快適に帰る事が出来た。
あれから25年経った今も、まだ自転車は停めたままだ。