どうしようもないクズ男の半生記

今年で40歳になり、人生を折り返そうとしているクズ男の半生記です。

【青春爆走編12】バイト行けねぇ~!

1993年も、もう終わりを迎えようとしている年末。

 

僕は悩んでいた。 

 

どうやってバイトに行くかを。

 

僕らは5人とも同じところでバイトしている。 

バイト先は、旅館というか、研修施設というか、会社の新人研修とかでよく使うような施設の厨房で、そこで晩ごはんの後の皿洗いや、次の日の朝食の盛り付けの準備などをしていた。

 

時給はすこぶる安かったが、まかない付だったし、みんな一緒だったので非常に居心地が良かった。

 

ただひとつ、建っている場所が非常に辺ぴな所なのだ。

丘の上とゆうか、山の中というか、周りには森か、果物畑しか無いような所だった。

 

原チャリなら10分、自転車なら1時間くらいかかる。

 

僕は16歳になってすぐ原付の免許を取ったが原チャリは持っていなかった。

その理由はまた別の話で。

 

いつもはバイトのシフトが5人の内、誰かと誰かはいつも一緒なので、原チャリに一緒に乗ってバイトに行っていた。

 

タツヤだけは3月生まれなので、まだ免許を持っていなかったが、あとの3人は原チャリがあるので、問題なかったのだ。

 

そしてここにきて今日はバイト入ってるのが僕1人だけという非常事態だ。

 

さあどうする?気合い入れて自転車でいくか?この寒い中?1時間もかけて?

ヒッチハイク?あんな車も全然通れへんとこで?

 

悩みに悩んだ末、結局自転車で行くことに。

 

途中まではいいのだが、後半は心臓破りの坂のオンパレードだ。

だから後半は、歩きオンリーである。自転車を押してる分、疲れる。

 

バイト中の作業よりも、そこまで行く事の方が遥かに体力を使う。

 

ゼエゼエいいながらやっとバイトに着いた。

 

 

 

【青春爆走編11】微妙に痛いんやけど!

ショウジが彼女にフラれたクリスマスより少し前、もう2学期も終わろうとしていた頃。

 

僕とマコは僕の部屋にいた。

 

「準備出来たで、マコ。」

 

「痛いんちゃん?いけるかな?」

 

「いけるやろ?一瞬ちゃうか?」

 

目の前には、安全ピン、オキシドール、氷、ライター、そしてピアスが並べられている。

 

当時はピアッサーというものが無く(あったのかもしれないが田舎には流通していない)ピアスを開けると言えば安全ピン、が主流だった。

 

自分で開けると穴が斜めに開いたりして、ずれたりするらしいので、マコとお互い開けあいする事にした。

 

まずは僕の耳から開ける事に。

 

耳たぶを氷で冷やす。これでもかっていう程冷やす。

その間にマコは安全ピンをライターで加熱処理。そしてそれをオキシドールで消毒する。

 

「よっしゃ、消毒終わったで。」

 

「冷やしすぎて耳痛いんやけど。一気にブスッと行って!」

 

マコは安全ピンを持って、僕の耳に針の先を突き刺した。

 

「どう?痛い?」

 

「いや、全然。余裕やな。」

 

針が刺さって行き、耳たぶの後ろ側の皮まできたとき、針が止まる。

 

「最後の皮、めっちゃ固いんやけど。」

 

「全然痛ないから、思いっきりいってもいけんで。」

 

「おっけ、思いっきりいくわ。」

 

そう言ってマコは力を入れて針を押し込んだ。

 

何とも例えようのない、プチッ、かパチッという音がして安全ピンが僕の耳たぶを貫通した。

 

「最後のんだけ、何か微妙に痛かったんやけど!」

 

「お前、耳たぶ分厚過ぎんねん!」

 

ここで攻守交代である。

 

マコが耳たぶを冷やしている内に、次の安全ピンを耳に安全ピンが刺さったまんまの男が用意する。

 

「マコ、耳たぶちっちゃいから簡単に開きそうやな。」

 

「ほんまかよ?痛くすんなよ!」

 

「痛くせえへんよ、血でたらごめんな。先謝っとくわ。」

 

会話だけ聞いてると完全にホモのエロシーンだ。

 

予想どおり、マコの耳は簡単に開ける事が出来た。

 

しかし2人にはある不安が。

ピアスの穴から白い糸が出てきて、それを引っ張ったら一瞬で失明する。

という有名なあの噂。

完全な都市伝説だとわかるのは、あと何年も先だった。

 

「なあマコ、穴から白い糸出てきても絶対引っ張ったらあかんで。」

 

「おう、タクも引っ張んなよ。」

 

完全に噂を信じ込んでいた2人だった。

 

【青春爆走編10】頼むから帰って!

こうして、ショウジにとっては最悪のクリスマス・イブが終わり、12月25日クリスマスになった。

 

この日は僕とショウジはバイトが入っていて、終わったのは9時半頃。

 

「タク、今からどうする?帰る?」

 

「ん~、そやなぁ、どこも行くとこないしなぁ、寒いしなぁ。」

 

「ヒロシの家行って見ようよ。どんな子か見たいわ。」

 

「そやな、見に行こか!」

 

別に行くところもなかったし、何よりも寒かったので、とりあえずヒロシの家に行くことに。

 

ヒロシの家の下に着くと、部屋の電気はついている。

 

手始めに軽く舌打ちを鳴らしてみる。

 

反応がない。

 

もう一度鳴らす。

 

しかし反応がない。

 

仕方ないので、2人で交互に舌打ちを繰り返す。かなりの近所迷惑だ。

 

すると、2階の窓が開いた。

「来んなってゆったやろ!じゃあな。」

 

「ちゃうねん!俺はやめとこうってゆったんやけど、タクがどうしても行くゆうから!」

 

見事なまでの裏切りである。

 

「嘘やで~。とりあえずめっちゃ寒いんやけど!」

 

「そら冬やからな!帰って風呂入れ!」

 

ヒロシはそう言いながら窓を閉めようとしたが、ショウジも引き下がらない。

 

「ちょっちょっちょっ!温かいミルクティー買って来たで!女の子の分もあるで!」

 

「飲んだらすぐ帰れよ!上がって来いよ。」

 

作戦成功である。この頃僕らは全員、ホットミルクティーにハマっていて、1日1本は必ず飲んでいたのだ。

 

部屋に入ると、ショートカットの女の子が座っていた。

僕とショウジはとりあえず挨拶をし、ヒロシと女の子にミルクティーを渡した。

 

「はよ飲んで帰れよ。おい!ショウジ!お前なんで靴下脱いでんねん!タク!マンガ読むな!」

 

僕もショウジも完全にくつろぎモードに入った。

 

ショウジが脱いだ靴下を持って女の子に話しかけた。

「めっちゃ臭い!臭い嗅いでみる?」

 

デリカシーのかけらもない。クリスマスにフラれるのも納得である。

 

更にショウジが追い打ちをかける。

「誰か紹介してよ~。可愛くて性格いい子!」

 

ショウジのワンマンショーである。

女の子もかなり引きぎみだ。

 

「お前ら、ほんま頼むから帰って!まじで!」

 

僕もショウジも、これ以上調子に乗ったらヒロシがキレてしまうと察して、帰る事にした。

 

「じゃあ、帰るわ。どうする?タク。タツヤの家行く?」

 

「いこか。でもおるかな?アイツ。」

 

僕とショウジはヒロシの部屋を出た。

 

その直後、ヒロシの声が響いた。

 

「ショウジ!靴下もってかえれ!」

 

 

 

【青春爆走編09】チクチクは嫌!

さっきまでは確かに無かった紙袋。

 

「ヒロシ、これ何やと思う?」

 

「ショウジのクリスマスプレゼントやろ?」

 

「もらったやつかな?あげようとしてたやつかな?」

 

そんな事を言っていると、ショウジが帰ってきた。

僕の分も買ってきてくれている。

買ってきてくれたホットミルクティーを飲みながらショウジに聞いてみた。

 

「この紙袋、どっち?もらったやつ?あげようとしてたやつ?」

 

「ああ、これ? あげようとしたやつ。」

 

そう言いながらショウジは紙袋の中身を取り出した。

中から出てきたのは見事なパステルカラーのニットマフラーだった。

 

「渡す前に別れてってゆわれたからなぁ。誰かいらんかな?」

 

どう見ても女性用のデザインなので、男はいらんやろう。しかも、みんな女兄弟がいない。僕だけ姉がいるが、歳もだいぶ離れていて、そもそももう家に居ない。

 

「ヒロシ、このマフラーいる?」

 

「アホか!何で俺が女性用マフラーせなあかんねん!」

 

「タク、いる?」

 

「ニットはチクチクするから無理!俺セーターとか着てるの見たことないやろ?」

 

「どうしようかな?これ。」

 

ショウジは少し考えて

「そうや、ヒロシのお母さんにあげるわ。いっつもお邪魔してるし!」

そう言って、マフラーを持って一階に降りていった。

 

さすがにヒロシもショウジの発想にあきれていた。

「なんでうちのオカンやねん。」

 

「ああ、でもなんかおばちゃん喜びそう。」

 

ショウジが戻ってきた。

「おばちゃん喜んでたで!」

 

「人のオカンに勝手にクリスマスプレゼントあげんといてくれる?」

 

「ってゆうかよ、ショウジ、明日この部屋に女の子来るらしいで。」

 

「お前、ゆうなって!」

 

「マジで!明日バイトの帰り絶対来よう。絶対来るで!」

 

「絶対くんな!」

 

ヒロシの部屋のステレオからは再び、ワンダフル・クリスマスタイムが流れていた。

【青春爆走編08】爪跡残せず!の巻

こういう女の子がらみの時は、タツヤははっきり言ってあてにならない。

なので、タツヤグリーンはほっといて、タクブルーのソロ攻撃に出ることに。

 

「オッス!俺、タクってゆうんやけど、●●さんの友達やねんな。名前なんてゆうん?」

 

...孫悟空か!

と突っ込みたくなるような会話の切り口だ。

 

「えっ、私?〇〇ってゆうんやけど...」

 

「へ~、〇〇ちゃんはどこから通ってるん?」

 

「□□市やで。」

 

□□市か...  

結構遠いな...

もし、もしも、付き合うってなったら遠いな...

とりあえず電話番号だけでも聞いとくか...

 

と一通りの妄想を終える。

 

「今度どっか遊びに行こよ。とりあえずまた電話するから、電話番号教えてよ。」

 

かなり恥ずかしかったが、勢いで言いきった。

 

すると意外な答えが。

「ちょっと待って、●●さんの友達やろ?今日は5人で来てない?」

 

「そやで。5人で来てるで。」

 

「さっき、ヒロシってゆう子とマコってゆう子に電話番号聞かれたで。教えてしまったけど。」

 

まさかのカブりである。

それにしても、ヒロシレッドとマコブラックは実に仕事が早い。さすが敏腕営業マン。

 

「まじで!ほんじゃ今度みんなで遊びにいこな。」

と社交辞令丸出しな感じでその場を去った。

 

もうそれからは、そんなにテンションもあがらず、面白そうなネタを探しながら校内をウロウロしていた。

 

そしてもう帰ろう、ということになり僕らは学校を後にした。ショウジだけはまだ残っていたので4人で帰ることに。

 

結局、なんの爪跡も残せず終わったが、女子高に入れただけでまあまあ満足だった。

 

 

...と、文化祭に行った時の事を思い出していたら、視界に紙袋が入った。

【青春爆走編07】女子高っていい匂いがする!

話は少しさかのぼり10月。

 

彼女から文化祭のチケットをもらえるという吉報をショウジが持ってきた。

 

しかも、僕らの分もあり、計5枚。

 

しかも、女子高の文化祭。

 

みんなテンションがあがらない訳がない。

 

そして、11月になり、文化祭当日。

テンションの高い、クソガキ5人が電車に揺られ揺られて1時間半。

 

その高校は都会のど真ん中にあり、きれいな学校だった。

 

田舎のサル5人が並んで颯爽と歩く姿はまるで、戦隊ヒーローを彷彿させる。

 

ヒロシがレッド、マコがブラック、タツヤがグリーン、ショウジは間違いなくイエロー、僕はさしずめブルー、といったところか?

 

門を入って、チケットを渡し受付を済ませる。

校舎の中に入ってすぐに感じた事は

『女子高、なんかいい匂いがする!』

 

ショウジはすぐに、彼女のところへ行ったので、4人で行動することに。

 

クラスごとに出し物みたいな事をやっていたので、端からまわってみる。

 

ここで、ヒロシとマコの本領発揮である。

かわいい子がいると、すぐに仲良くなって、楽しそうにしゃべっているではないか!

ヒロシもマコも男の僕からみてもカッコいいので、それも納得できる。

「アンタら、いい営業マンになれるよ。」

僕は心の中で思っていた。

 

知らない間にヒロシとマコはいなくなっていて、僕とタツヤだけになった。

 

タツヤ、喉かわけへん?なんか飲む?」

 

「かわいた。飲む。」

 

僕とタツヤは、喫茶店みたいな出し物をしている教室でジュースを飲んでいた。

 

ジュースを飲みながら、女子高生を見ていると、結構なお嬢様学校らしく、みんな育ちが良さそうだ。

 

僕とタツヤでは、ちょっとハードルが高すぎる。

ここで、考える。

「まあでも、旅の恥はかき捨て、って言うからな~。せめて1人くらいでも仲良くなって帰ろかな。」

 

そう考えた僕は、早速行動に出る。

ハイソな感じの子が多いので、普通にノリよくしゃべってくれそうな子、尚且つ、かわいい子、にターゲットを絞りこんだ。

 

獲物を狙うハンターのごとく、感覚を研ぎ澄ませる。

 

探し回ること30分。

 

とうとう見つけた!

 

ハイソじゃなく、普通に話してくれそう、そして、かわいい。

バッチリではないか。

 

そして、僕はその子に話しかけてみた。

 

 

 

【青春爆走編06】愛情より友情?

7分泣きのショウジを見ながら、2人とも目が点になってしまう。

 

すると、泣きながらショウジが

「やっぱ友達って最高やでな~。いや~、ヒロシかっこええわ~。付き合ってよ。」

 

「きしょいんやって!お前!」

 

ショウジは昔から、ちょっと気の弱い所はあるが、感動しいな所もあり、テレビドラマを観ても涙を流すようなピュアな男である。

 

「ヒロシのおかげでスッキリしたわ。ありがとう。」

 

「ってゆうか、お前、自分で電話せえよ。何で俺が電話すんねん!」

 

「ジュースおごるから。何がいい?」

 

そう言ってショウジはジュースを買いに行った。

 

ふと気になったので聞いてみた。

 

「なあ、ヒロシ。さっきもし、山本が来るんやったら来いや、みたいになってたらどうしてた?」

 

「ボッコボコにしに行ってた。3秒で。」

 

「やでな!俺、電話の途中で、もう上着着て出る準備してたのに。」

 

「でも、●●さんもエグいでな。他に好きな人できた、とか。」

 

●●さんは、昔から真面目な女の子というイメージがあり、頭もいい。

なんで、ショウジと付き合ってたのか不思議なくらいだ。

頭もよく、真面目なお嬢様と下品でアホ丸出しな感じのショウジのミスマッチ。

 

例えると、フランス料理ばかり毎日食べていると、カップラーメンが食べたくなる、みたいな感じだろうか?

 

●●さんとショウジは、そんなに長く付き合っていた訳ではないのだが、先月に、僕も合わせて5人ともお世話になった。

 

●●さんはお嬢様で、私立の女子高に通っている。そして、先月にその通っている学校の文化祭があり、僕ら5人分のチケットを用意してくれたのだ。

 

チケットがないと、学校の中にすら入れないらしく、まさにプレミアチケットだった。

 

僕はその時の事を思い出していた。