【出逢い編21】沈黙、そして沈黙
「あのさ...」
覚悟を決めて言葉を発してみた。
「何?」
「有美の目に俺はどう映ってるん?」
彼女はちょっと驚いたような表情をしていたが、すぐに元の様子に戻り、考えこんでいた。
そこから、また沈黙が始まる。
体感的に1時間くらいに感じられる沈黙の空気は、あまりにも気まず過ぎて車から飛び出して目の前の海にダイブしようか、という気持ちにさせる。
お互いに、次にどっちが話し出すか待っているような非常に張りつめた空気である。
先にこの膠着状態を破ったのは、有美の方だった。
「ん~、悪くないよ。」
これまた微妙な返答である。
悪くはない。しかし良くもない。って事なのか?
そしてまたまた沈黙タイムが始まる。
21年生きてきた中でもトップクラスの気まずさだ。
悪くない、の答えの次の言葉が見つからず、タバコに火をつけて、冷静を装う。
装おってはいるものの、おそらくこの時、かなり挙動不審な動きをしていたと思う。
繰り返される沈黙に終止符を打ったのは、有美だった。