【出逢い編22】男らしいなぁ
あまりの気まずさ。
あまりの沈黙。
それに耐えられなくなったのか、先に口を開いたのは有美だった。
「なんでそんな挙動不審なん?」
「そ、そう?全然そんなんちゃうし。」
「いやいや、怪しすぎるって。」
「全然怪しないし。」
若干、すね気味にまたタバコに火をつける。
「なあ。」
「何?」
わざとちょっと素っ気なく答えてみる。
「私、たくちゃんの彼女になりたい。」
タバコを口に運ぶ手が止まった。
というよりも、車内の時間が止まったような感覚だった。
「うん、わかった。これからもよろしくな。」
なんてえらそうな言い方だ。これがさっきまで挙動不審な動きをしていた奴と同一人物とは思えない。
有美の方がよっぽど男らしかった。
多分、俺が告白してくるのは空気で分かっていたと思うが、なかなか言わないのでしびれを切らした、という所だろうか。
とにもかくにも、こうして僕と有美は付き合う事になった。
気付けばもう、日付も変わっていたので、帰ることにした。
「家まで送ってってな。」
この日から二人の長い付き合いが始まる事になる。
たくや21歳の6月だった。