【青春爆走編11】微妙に痛いんやけど!
ショウジが彼女にフラれたクリスマスより少し前、もう2学期も終わろうとしていた頃。
僕とマコは僕の部屋にいた。
「準備出来たで、マコ。」
「痛いんちゃん?いけるかな?」
「いけるやろ?一瞬ちゃうか?」
目の前には、安全ピン、オキシドール、氷、ライター、そしてピアスが並べられている。
当時はピアッサーというものが無く(あったのかもしれないが田舎には流通していない)ピアスを開けると言えば安全ピン、が主流だった。
自分で開けると穴が斜めに開いたりして、ずれたりするらしいので、マコとお互い開けあいする事にした。
まずは僕の耳から開ける事に。
耳たぶを氷で冷やす。これでもかっていう程冷やす。
その間にマコは安全ピンをライターで加熱処理。そしてそれをオキシドールで消毒する。
「よっしゃ、消毒終わったで。」
「冷やしすぎて耳痛いんやけど。一気にブスッと行って!」
マコは安全ピンを持って、僕の耳に針の先を突き刺した。
「どう?痛い?」
「いや、全然。余裕やな。」
針が刺さって行き、耳たぶの後ろ側の皮まできたとき、針が止まる。
「最後の皮、めっちゃ固いんやけど。」
「全然痛ないから、思いっきりいってもいけんで。」
「おっけ、思いっきりいくわ。」
そう言ってマコは力を入れて針を押し込んだ。
何とも例えようのない、プチッ、かパチッという音がして安全ピンが僕の耳たぶを貫通した。
「最後のんだけ、何か微妙に痛かったんやけど!」
「お前、耳たぶ分厚過ぎんねん!」
ここで攻守交代である。
マコが耳たぶを冷やしている内に、次の安全ピンを耳に安全ピンが刺さったまんまの男が用意する。
「マコ、耳たぶちっちゃいから簡単に開きそうやな。」
「ほんまかよ?痛くすんなよ!」
「痛くせえへんよ、血でたらごめんな。先謝っとくわ。」
会話だけ聞いてると完全にホモのエロシーンだ。
予想どおり、マコの耳は簡単に開ける事が出来た。
しかし2人にはある不安が。
ピアスの穴から白い糸が出てきて、それを引っ張ったら一瞬で失明する。
という有名なあの噂。
完全な都市伝説だとわかるのは、あと何年も先だった。
「なあマコ、穴から白い糸出てきても絶対引っ張ったらあかんで。」
「おう、タクも引っ張んなよ。」
完全に噂を信じ込んでいた2人だった。