【青春爆走編10】頼むから帰って!
こうして、ショウジにとっては最悪のクリスマス・イブが終わり、12月25日クリスマスになった。
この日は僕とショウジはバイトが入っていて、終わったのは9時半頃。
「タク、今からどうする?帰る?」
「ん~、そやなぁ、どこも行くとこないしなぁ、寒いしなぁ。」
「ヒロシの家行って見ようよ。どんな子か見たいわ。」
「そやな、見に行こか!」
別に行くところもなかったし、何よりも寒かったので、とりあえずヒロシの家に行くことに。
ヒロシの家の下に着くと、部屋の電気はついている。
手始めに軽く舌打ちを鳴らしてみる。
反応がない。
もう一度鳴らす。
しかし反応がない。
仕方ないので、2人で交互に舌打ちを繰り返す。かなりの近所迷惑だ。
すると、2階の窓が開いた。
「来んなってゆったやろ!じゃあな。」
「ちゃうねん!俺はやめとこうってゆったんやけど、タクがどうしても行くゆうから!」
見事なまでの裏切りである。
「嘘やで~。とりあえずめっちゃ寒いんやけど!」
「そら冬やからな!帰って風呂入れ!」
ヒロシはそう言いながら窓を閉めようとしたが、ショウジも引き下がらない。
「ちょっちょっちょっ!温かいミルクティー買って来たで!女の子の分もあるで!」
「飲んだらすぐ帰れよ!上がって来いよ。」
作戦成功である。この頃僕らは全員、ホットミルクティーにハマっていて、1日1本は必ず飲んでいたのだ。
部屋に入ると、ショートカットの女の子が座っていた。
僕とショウジはとりあえず挨拶をし、ヒロシと女の子にミルクティーを渡した。
「はよ飲んで帰れよ。おい!ショウジ!お前なんで靴下脱いでんねん!タク!マンガ読むな!」
僕もショウジも完全にくつろぎモードに入った。
ショウジが脱いだ靴下を持って女の子に話しかけた。
「めっちゃ臭い!臭い嗅いでみる?」
デリカシーのかけらもない。クリスマスにフラれるのも納得である。
更にショウジが追い打ちをかける。
「誰か紹介してよ~。可愛くて性格いい子!」
ショウジのワンマンショーである。
女の子もかなり引きぎみだ。
「お前ら、ほんま頼むから帰って!まじで!」
僕もショウジも、これ以上調子に乗ったらヒロシがキレてしまうと察して、帰る事にした。
「じゃあ、帰るわ。どうする?タク。タツヤの家行く?」
「いこか。でもおるかな?アイツ。」
僕とショウジはヒロシの部屋を出た。
その直後、ヒロシの声が響いた。
「ショウジ!靴下もってかえれ!」