どうしようもないクズ男の半生記

今年で40歳になり、人生を折り返そうとしているクズ男の半生記です。

【青春爆走編09】チクチクは嫌!

さっきまでは確かに無かった紙袋。

 

「ヒロシ、これ何やと思う?」

 

「ショウジのクリスマスプレゼントやろ?」

 

「もらったやつかな?あげようとしてたやつかな?」

 

そんな事を言っていると、ショウジが帰ってきた。

僕の分も買ってきてくれている。

買ってきてくれたホットミルクティーを飲みながらショウジに聞いてみた。

 

「この紙袋、どっち?もらったやつ?あげようとしてたやつ?」

 

「ああ、これ? あげようとしたやつ。」

 

そう言いながらショウジは紙袋の中身を取り出した。

中から出てきたのは見事なパステルカラーのニットマフラーだった。

 

「渡す前に別れてってゆわれたからなぁ。誰かいらんかな?」

 

どう見ても女性用のデザインなので、男はいらんやろう。しかも、みんな女兄弟がいない。僕だけ姉がいるが、歳もだいぶ離れていて、そもそももう家に居ない。

 

「ヒロシ、このマフラーいる?」

 

「アホか!何で俺が女性用マフラーせなあかんねん!」

 

「タク、いる?」

 

「ニットはチクチクするから無理!俺セーターとか着てるの見たことないやろ?」

 

「どうしようかな?これ。」

 

ショウジは少し考えて

「そうや、ヒロシのお母さんにあげるわ。いっつもお邪魔してるし!」

そう言って、マフラーを持って一階に降りていった。

 

さすがにヒロシもショウジの発想にあきれていた。

「なんでうちのオカンやねん。」

 

「ああ、でもなんかおばちゃん喜びそう。」

 

ショウジが戻ってきた。

「おばちゃん喜んでたで!」

 

「人のオカンに勝手にクリスマスプレゼントあげんといてくれる?」

 

「ってゆうかよ、ショウジ、明日この部屋に女の子来るらしいで。」

 

「お前、ゆうなって!」

 

「マジで!明日バイトの帰り絶対来よう。絶対来るで!」

 

「絶対くんな!」

 

ヒロシの部屋のステレオからは再び、ワンダフル・クリスマスタイムが流れていた。