【青春爆走編09】チクチクは嫌!
さっきまでは確かに無かった紙袋。
「ヒロシ、これ何やと思う?」
「ショウジのクリスマスプレゼントやろ?」
「もらったやつかな?あげようとしてたやつかな?」
そんな事を言っていると、ショウジが帰ってきた。
僕の分も買ってきてくれている。
買ってきてくれたホットミルクティーを飲みながらショウジに聞いてみた。
「この紙袋、どっち?もらったやつ?あげようとしてたやつ?」
「ああ、これ? あげようとしたやつ。」
そう言いながらショウジは紙袋の中身を取り出した。
中から出てきたのは見事なパステルカラーのニットマフラーだった。
「渡す前に別れてってゆわれたからなぁ。誰かいらんかな?」
どう見ても女性用のデザインなので、男はいらんやろう。しかも、みんな女兄弟がいない。僕だけ姉がいるが、歳もだいぶ離れていて、そもそももう家に居ない。
「ヒロシ、このマフラーいる?」
「アホか!何で俺が女性用マフラーせなあかんねん!」
「タク、いる?」
「ニットはチクチクするから無理!俺セーターとか着てるの見たことないやろ?」
「どうしようかな?これ。」
ショウジは少し考えて
「そうや、ヒロシのお母さんにあげるわ。いっつもお邪魔してるし!」
そう言って、マフラーを持って一階に降りていった。
さすがにヒロシもショウジの発想にあきれていた。
「なんでうちのオカンやねん。」
「ああ、でもなんかおばちゃん喜びそう。」
ショウジが戻ってきた。
「おばちゃん喜んでたで!」
「人のオカンに勝手にクリスマスプレゼントあげんといてくれる?」
「ってゆうかよ、ショウジ、明日この部屋に女の子来るらしいで。」
「お前、ゆうなって!」
「マジで!明日バイトの帰り絶対来よう。絶対来るで!」
「絶対くんな!」
ヒロシの部屋のステレオからは再び、ワンダフル・クリスマスタイムが流れていた。