【出逢い編08】ご近所物語
自分は本当に"タクヤ"であるという事を必死に説明しながら、僕は改札を出た。
ホームの椅子に座っていると、電車の音や、アナウンスの声がうるさかったからだ。
自分の家まであと4駅。歩いたら1時間くらいかかる距離だ。
携帯で会話しながら、歩いて帰る事に。
お互いの名前の次は、お互いの住んでいる所の話に。
まずは僕から質問してみる。
「どこに住んでるん?」
「遠いで。」
「どこどこ?」
この時、僕は彼女はあのパチンコ屋さんの近く、もしくはもっと都会の方に住んでいると思いこんでいた。
が、彼女の「遠いで。」の意味は全く違っていた。
実は彼女の家は、僕の家から車で10分くらい、自転車でもいけるような距離だったのだ。
「遠いで。」の意味は逆に彼女が、僕があのパチンコ屋さんの近くに住んでいる人、だと思い込んで、遠いと勝手に勘違いしたらしい。
言ってみれば、2人ともあのパチンコ屋さんから同じ方向に帰ってる訳である。
この偶然には流石にテンションもうなぎ登りである。
ただ彼女も警戒して、家の正確な場所までは教えてくれなかった。
実は近所だった、という偶然に運命めいたものを感じずにはいられないタクヤ20歳の5月であった。